固さと緩め方

治療というとマッサージや鍼灸、整体をはじめ色々ありますが、ざっくりと身体の固くなったところ緩めるもの、というイメージを持っている方も多いかと思います。

固くなることと緩むことには実は色々あります。今回はそのお話です。

まず、固くなることには大きく3種類あります。

①使い過ぎで固くなる

②使わな過ぎて固くなる

③防御作用として固くなる

①使い過ぎで固くなる

これは1番イメージしやすいと思います。走ったり、歩いたり、荷物の積み下ろしをしたりなど、身体に一定の負荷をずっとかけていると何回も何回もちょっとずつ力んでいき、それが積み重なって固くなるということですね。

これは基本的には睡眠を十分に取れば緩んで回復します。睡眠不足や、力みをうまく抜けないままでいると動きの制限も生まれ、痛みなどになっていきます。

力みを取ることができれば基本オッケーなので、揉むでも鍼打つでも、灸をすえるでも、動かすでも、とにかく色んな緩める技法が使えます。

②使わな過ぎて固くなる

意外かもしれませんが、このケースが実はかなり多いです。滞るという表現を使うこともありますが、慢性的な症状の多くはこちらのケースが多いです。

同じ姿勢でずっと作業したりということでもなりますが、全身色んなところを使わなくても生きていける社会環境にあるので、そもそも日常的に使わずに「なまって」いるところが多いのも原因です。

特に肩甲骨周りや股関節周りはこのケースは少なくないです。

この場合、ただ緩めるだけだと力がきちんと入らず重さやだるさに繋がります。運動系の施術や、強い刺激で反射的な動きを出したり、動きを取り戻すような技法でないと中々改善しないことも多いです。

③防御作用として固くなる

これはかなり特殊なケースですが、一度に強い衝撃を受けたり、疲労の蓄積で身体が限界に達して身体を守ろうとして固くなった状態です。

ひどいギックリ腰だとか、交通事故であったり、記憶に強く残っているような怪我や衝撃を身体に受けた時、強い精神的なストレスを受けた時などに起こります。

ひどいギックリ腰の場合は表面的にも固さが分かりますが、この固さが動ける状態をギリギリで保っているので、緩めると動けなくなる、ということも起こり得ます。この場合、動きやすくなるか、を基準にすると安全です。

とはいえ、ここまでひどい状態の場合は時間をかけないと中々改善しにくいのは確かです。

衝撃を受けた時は身体の奥の方の固さになるので気付けないことがほとんどです。反射的にグッと固くなり続けているので、緩めるというより固まろうとする働きをリセットするような感じです。これには表面からの刺激ではかなり難しいので、当院では体芯矯正療法という少し特殊な技法を使います。

以上見てきましたが、身体の動きというのは固くなることと緩むことのコントロールによって生まれているので、固くなる、緩むのどちらが良い、悪い、ではありません。固くなりっぱなし、緩みっぱなしという異常な状態が身体の不調を生み出す原因になります。

また固まり方の特徴によって、向いている技法も違います。

①は比較的どんな手法でも大丈夫ですが、生活の中での動きの見直しが必要です。

②の、使わな過ぎて固くなるパターンの場合は完全に受け身の治療よりも自らも動いて参加するような治療やボディワークなどの方が改善しやすかったりもします。

③は結構強めの刺激の治療が必要な場合が多いです。

②のケースの方は実態としてはかなり多いのですが、日頃から運動の習慣やボディワークに取り組む習慣があって健康を維持しているというのはこの②の固さの改善がうまくいっているという面があります。

③の衝撃系は突発的な原因ですが、それ以外は、実は日常の生活習慣や行動、動きのクセの見直しによって未然に防ぎやすいものでもあるので、治療と共に予防にも目を向けておくといいですね。